「頼もーーう!!!」

拳を振り上げ、いつものように勢い良くドアを叩こうとした瞬間、中からドアが開いて俺はたたらを踏んで転がり入った。

「みっ…澪ちゃん……突然開けんなよっ……!!」
「ごめーん!けど友くんもいい加減にちゃんとベル鳴らして来てよーー。毎回あんなドンドン叩かれちゃドア壊れちゃうじゃん。」
「くっ…すまん」


潤一の妹の澪ちゃんが、家の中からちょうど玄関のドアを開けたんだった。澪ちゃんは俺達の1個下で、同じ学校に通う後輩だ。潤一に似ず、顔は可愛いが性格はおばちゃんにそっくり……つまり潤一そっくりに口が悪い。

「アニキならまだ帰ってないヨーー」
「えっ、そうなのか?」

潤一は帰宅部の俺と違ってサッカー部だから、学校の帰りはいつも遅い。けど俺も今日はチョコの数を増やそうとギリギリまで粘って、帰り道も村木とだらだら寄り道しながら帰って来たから、潤一が帰っていてもいい時間帯だった。

「私もアニキに用があるから待ってるんだよねーー。まだかなーと思って様子見にドア開けたら友ちゃんが転がり込んでくんだもん、びっくりしたよ」
「そっか。潤一今日は部の片づけ当番でもやってんのかなーー」
「かなー。朝行くときは何も言ってなかったんだけどなーー。遅くなるなら教えてくれりゃいいのにもーー」

澪ちゃんは眉をしかめた。澪ちゃんは可愛いんだけど、そういう顔するとおばちゃんそっくりでちょっと怖い。本格的に怒り出す前に、話を逸らした方がよさそうだ。

「あ、そーだ」

俺はポンと手を打ち、両手の手のひらを上に向けて、澪ちゃんに差し出した。

「澪ちゃーん、なんか忘れてなーい?」
「ああん?もーなによ面倒くさい。なんか借りてるものあったっけ?」
「そうじゃなくてぇーー、ほらーー、ね?」
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