「おーこわっ」

村木は逞しく盛り上がった自分の胸を抱き震えてみせた。キモイからやめろそのオネエ言葉。

「潤一君たら、最近怖いくらいモテモテだもんねーー」
「くそっ…何故だ……何故この俺より潤一の方がモテるのだ……」

俺は怒りに肩を震わせた。

「なんでだろーねー。俺の方がよっぽどいい男なのにー」

「……村木…鏡見たことあるか」

俺は村木の肩に手を置いた。バカデカいからこれがまた置きにくいのなんのって……何食ったらそんなにでかくなれるんだ村木よ。

「もっちろんよぉー。毎日ボディチェックしてるわよ?
みてこの美しい三角筋、上腕二頭筋、三頭筋……」

町中で一人ボディービルディングを始めた村木を置いて、俺はすたすたと歩き去った。オレもアホだが、少なくとも奴のように羞恥心を忘れるレベルにまで身を落とすつもりはない。




一人で家に向かって歩きながら、俺は考えた。
何はともあれ、潤一の奴に預かったチョコを渡す他はあるまい。
俺の手元にあるチョコレートは、俺宛のが6つで、潤一宛のが4つ。
オレのが明らかにどれも義理でしかもそのうちの4つは潤一へチョコを渡すついでの届け賃だった事は置いておくとしても、だ。

今のところ2つ勝っているには違いない。
潤一本人に渡されたチョコの数が、もし2つ以下ならば、まだオレにもチャンスがあるっ……!!

俺は家の前まで来ると、俺の家の玄関を開ける代わりに、隣の潤一の家の玄関の前に仁王立ちした。

いざ、勝負!


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