「こら潤一、そこは鏡の前じゃないよっ、もう、寝ぼけるのも大概におしっ」
後ろから母ちゃんのスリッパが飛んできて俺の頭にぶつかって落ちた。

「母ちゃん、俺寝ぼけてねぇよ」
後ろ頭をなでながら俺は振り返った。

「じゃあバカもいい加減におしっ!早く行かないと遅刻するよっ」
「やべっ、もうこんな時間だ……!!」

時計を見て俺はあわてた。
朝にチョコを渡そうと待っている女子がいるかもしれないのに、貴重な休み時間を減らしちゃいけねぇぜ。

「行ってくるっ……!」
「ハイハイ行ってらっしゃい。」
母ちゃんに見送られて、俺は鞄をひっつかんで家を飛び出した。
……が、塀を出たところでUターンした。

「母ちゃん!!母ちゃーん!」
「なんだい、また忘れものかい」
「俺、バカじゃねーかんなっ!」
「……そんな事言いに戻ってくる暇があるならとっとと行きなっこのバカ!」
「だからバカじゃねー……!!」

叫びながら俺は今度こそ本当に学校へ向かった。





そして時は移って今現在14日の夕方6時。帰宅の途につく俺の鞄の中には10個のチョコレートが入っていた。

「友治、今日はお前もててたじゃん。結局チョコいくつもらったんだ……?」
「……6個……」

無邪気に聞いてくるアホ友村木に俺は沈んだ声で応えた。

「すっげぇなー。やっぱモテ男は違うよなー」
「すげくねぇよ…去年は8個だったのに……」
「贅沢言うんじゃねーっての」
「イテッ」

村木に後頭部を殴られた。
おま、今わざと手加減しなかっただろ。
俺は恨めしげに村木を見上げた。



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