「それでお前、なんて返事したんだ。」
「何の話だ。主語と目的語を言え。」
「ぬっ…難しいことを言って俺をケムに巻くつもりかっ!?女子だよ女子!」
「…助詞?」
「だからお前告白されたんだろう!」
「ああ、その返事か。まどろっこしい、質問は一度で通じるように言え。」
「なんでもいいから教えろ」
「お前に教える義理はないが、時間の無駄だからとっとと教えてやる。断った。だから帰れ。」

「ぬっ…こ…断ったのか!?」
俺はその瞬間ほっとして思わず笑ってしまった。俺にさえまだ彼女がいないのに、潤一の方が先に彼女を作ってしまったら、俺の立場というものがない。本当に良かった。いやあ良かった。本当に。

「はっはっはっ、君にはまだ早いと思っていたんだよ。いや杞憂で良かった。じゃあな!」
「…二度と来るな」

潤一の冷たい言葉も全く気にならなかった。
そうかそうか。いやー良かった。良かったなぁ。
俺は大きなステップを踏みながら隣の自分の家に戻った。
口が自然に大きなスイカの切れっ端みたいな形になってしまうのを止められない。

「ただいまぁー」

自分ちの玄関を空けて、ふと思いついた。
そうだ、俺大事なことまた忘れてる。

「おかえりなさい。遅かったわね。」
母ちゃんが迎えてくれたので、俺は
「行ってきます」
と言って回れ右した。
「また何とんちきな事言ってんのよこのバカ息子」

母ちゃんの声を背に聞きながら、俺はまた潤一の家の扉をドンドンと拳で叩いた。
「おーい、潤一、忘れ物した!!空けてくれ!!」
「…いい加減にしろっ!なんなんだお前は!!」

ドスドスと大きな足音がして、扉が勢いよく開いた。


「だから忘れ物」
「何を忘れたのか早く言え!用件は!簡潔かつ正確に!」
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。