俺はショックを受けた。それはもうすんげぇショックを受けた。

「おまえ、俺とおまえのこの美しい長年の友情を全否定する気かぁ!」
「アホ」

潤一の野郎、憎らしいほどに落ち着き払ってやがる!
さすが長年のつきあいだぜ、俺は口ではあまり潤一に勝てなかった事を今更だが思い出す。

「じゃあ、俺はおまえのなんなんだ!」
「ただのくされ縁だ。」
「なっ…!」

俺はグゥの音もでない程に叩きのめされた。
くされ縁…くされ縁…。
これまでずっと俺は潤一の事を親友だと信じてきたのに、潤一にはそうじゃなかったというのか。
潤一にとって俺は「くされ縁」などという聞くもしんきくさい存在なのか。
「くされ縁」という言葉には何か「できれば離れたいのだが」というニュアンスを感じる気がする。
俺の考えすぎだろうか。
だが潤一のこの態度…信じたくはないが、そう考えた方が妥当な気がする。
落ち着け。しっかりするんだ俺。
現状を正確に把握することが戦場において第一に重要だ。

俺は頭をフル回転させ、これに反論する方法を考えた。
忘れていたが、俺は考え事が苦手だ。

「用件はそれだけか。俺は忙しい、とっとと帰れ。」

頭を抱えてうなっていた俺に、潤一の容赦ない一言が最後のとどめとなって突き刺さった。

ダメだ。明らかに状況は俺に不利だ。ここはいったん退き、作戦を練り直して出直すしかない。

「わ…分かった。ここはいったん引き下がろう…だがこれでお前の勝ちと思うなよ!俺がおまえの親友だって事を、必ず思い知らせてやる…!!」
「うるさい、帰れ。」
「くそうっ…憶えてろよっ…!!」

俺はきびすを返して潤一の家を後にした。
泣きはしなかったが泣いてもいいぐらいの気持ちだった。

…が、俺の後ろで潤一の家のドアがしまった音を聞いて、はたと我に返った。
…俺、そもそもなんで潤一の家に来たんだっけ。
なんか忘れてないか??

「ちょっと待ったぁ!」

俺は再び潤一の家のドアを開けた。…勝手に。


「…帰ったんじゃなかたのか?」

背を後ろに向けて、すでに奥の部屋へと戻ろうとしていたらしい潤一が振り返る。
おまえ、俺が帰ると言ったら速攻部屋に戻るつもりだったな。
ちょっとは俺を追いかけようとか、追いかけないまでも後ろ姿をいつまでも見つめつづけるという余韻があったっていいだろう。

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