潤一とまたケンカした。

今度のケンカのきっかけは、女の話。
潤一のやつ、クラブの後輩の女子に告白された話を俺に秘密にしてやがった。
赤点の補習で休日だってのに登校させられた学校で、
同じく補習を受けていた村木にそれを聞かされた俺は、その日補習が終わるまでムカムカしながら過ごし、帰ってソッコー潤一の家に押しかけた。

「なんで秘密にすんだよ」
「なんでおまえに報告しなきゃなんないんだよ」

問い詰めた俺の言葉を潤一はあっさり切り捨てた。

「俺とおまえの仲じゃねーか」
「俺とおまえの間にどんな仲があるっていうんだよ」
「生まれる前から一緒の俺に対してその言いぐさか」

俺と潤一の家は隣同士で、じいちゃんのそのまたじいちゃんから親父に至るまで、
昔から代々ここに住んでいる。昔っからお隣さんだから、親同士も幼馴染みだ。
かーちゃんのお腹の中にいたころから俺と潤一は保育園も小学校も中学校も、
そして高校もずーっと一緒に育って来たのだ。

「おまえ自分の年知ってるか」
「もちろんだ。こないだ17になったぜ。もうおまえに年下とは言わせねぇ。」
「そんな事言ってんじゃねぇよ。もう幼馴染みだどうだってべったりくっついてる年じゃねぇだろ。いい加減普通に友人を作れ友人を。」
「友人はおまえじゃねーか。俺の親友はおまえ以外にいない。」

俺は潤一の肩に手を置き、頼りがいのある兄貴の心境で潤一を見下ろした。
誕生日は数ヶ月後だが、今の所身長は俺の方が1cmばかり高いのだ。

「親友なぁ…。」

潤一の気のない返事に俺はムッとする。
「親友だろうが。誰がみたって親友だ。
 かーちゃん達に聞いてもご近所の皆様に聞いても学校中の奴らに聞いてもいい。
 誰に聞いたって俺とおまえは間違いなく親友同士だ。」

俺は胸を張る。
幼稚園の頃はよくおもちゃの取り合いでコイツの事泣かせたっけなぁ…。
けど他の奴らにいじめられた時は助けに言ってやったぜ。俺と潤一の仲だからな。
まぁ一緒にやられてたけど。
そのおかえしに大嫌いなピーマン譲ってやったりな。
俺が野球始めた時もサッカーに乗り替えた時も「友治君と一緒がいい」とか言って追いかけてきやがってさ。
俺の方はサッカーもその後やめちまったけど、最初に潤一にサッカー教えてやったのは俺なんだぜ…。


俺が走馬燈のように生まれた頃からのことをうんうんと思い返していると、潤一は冷めきったまなざしを俺に向け、低いドスの聞いた声で俺の思考を中断した。

「あのな。この際はっきり言っておくが、俺とおまえは親友じゃねぇ。友達でもねぇ。いい加減に分かれ。」
「なっ…なんだとぅ!」

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